巷では、映画「ボヘミアン・ラプソディー」の影響もあってか、Queenが去年くらいから急速に盛り上がってきた。今年の冬は自分も何かとQueenを意識するような冬になった。しかし、自分の中のクイーンは中学1年生の冬の時点からずっと更新されず、止まっていた。
中学入学と同時にまずさせられることの1つに、部活動のどこかしらへの所属があった。打算的なのかわからないが、どうせ部活で活動するなら、他のヤツより目立ったり活躍できた方がモテたり学生生活で有利な事が多いと思った。そして、男子バレーボール部に入部した。小学校時代にある程度経験した野球、サッカー、バスケで迷ってたが、結果バレーボールという未経験のスポーツを選択した。そして、おそらくバレーボール部に入部した他の同級生にも同じことが言えた。
そこがポイントだった。
野球、サッカー、バスケなら小学校時代に、リトル野球リーグ、少年サッカーチーム、ミニバスケットボールチームと、ある程度経験を積める団体があって、出来るヤツはそこで既に頭角を現していた。しかし、バレーボールに至っては小学生向けのチームなど無かった。なので他のどんな奴にとっても未経験のモノであり、そこに技術や経験の差という物は存在していなかった。そしてこれならハンデなしで張り合えるし、実力や努力を試すのにちょうど良い対象だと思ったのであった。
1年生の冬の終わり頃だったろうか。近隣の中学校を集めて毎年恒例の『1年生大会』というのが行われた。自分はそれなりに必死に練習をしたり、時には顧問や先輩の機嫌を取ったりして、1年生チームのキャプテンの座を勝ち取ることに成功した。と同時に、2年生の先輩から『3位以内に入れなかったら、全員ボウズ頭』という罰が課せられた。当時、色気づき始めた自分にとって、ボウズ頭は絶対にしたくない事の1つだった。何としてでもボウズ頭を阻止する為に、最悪1人でも自力で点の取れるサーブを中心に日々練習に打ち込んだ。その日々のサウンドトラックとしてよく聴いていたのがクイーンだった。自分の通っていた笠懸中学校の近くに『ソフト・イン・サカイ』という本屋とCD屋が合体したお店があった。その店には、海賊版の激安CDコーナーがあった。駅やパーキングエリアでワゴンで売ってるような非公式の洋楽アーティストベスト盤のソレがいろいろ売っていた。カーペンターズ、ドゥービーブラザーズ、サイモン&ガーファンクル、アバ…etc。その中からたまたま選んだのが、クイーンだった。小遣い貯めて初めて自分で選んで買ったCDがそれだった。なんだか嬉しくてとにかく毎日ひたすら繰り返し聴いた。1曲目Killer Queenから始まって最後はWe are the championで終わる、初期〜中期にかけてのベスト盤だった。そして当時1番好きだった曲が『Nevermore』という曲だった。(中学生当時は歌詞の意味なんて気にして無かったが、大人になってからは心に染み入る内容だと解った…)以下、歌詞↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
最早、生きる意味は無い、なんて
海は干上がり、雨は枯れ果てたとして
あなたの涙は止められないの?
どうして
聴き澄まして、そよめきを
語りかけて、囁きを
二人で辿ったこの道に、引き返せなくなる前に
なだらかな山あいは芽ぐみ
柔らかな陽射しの温もりで、満たされるというのに
僕の心は育みもなく
どうして
なぜ僕の元を去ったの
なぜ僕の心を奪ったの
二度と戻れない道へと僕を追い遣って
最早、僕を愛していなかったと言うのであれば
もう、戻れない
最早、かえらない
2分にも満たない短くともドラマティックで美しい曲だった。
そんなクイーン漬けの冬の日々をサーブ練習とともに過ごし、迎えた1年生大会。たしか6、7チーム総当たり戦で行われ、なんとか3位決定戦まで漕ぎ着けた。練習を重ねたサーブで得点を稼いで、結局接戦を制し見事3位に食い込み、ボウズ頭を阻止することに成功したのだ。頭の中ではもちろん『♪ウィ〜ア〜ザチャ〜ンピオ〜ン〜』が高らかに鳴り響いていた(まあ、チャンピオンではなかったけど…)。
時は経ち、あれからちょうど30年近く…。更新されてなかった自分の中のクイーンが、今年の冬に久々に更新された。30年前とは音楽の聴かれ方も変わってきた。レコードの時代からCDの時代になり、今はサブスクリプションと言われる定額制音楽配信サービスの時代へとなりつつある。自分も最近は、定額制音楽配信サービスSpotifyを駆使して、まるでレコード屋がスマホの中に宿ったかの如く、日夜ディグっている。そして、時々やるのが1つのアーティストに絞って全アルバムの全曲をパッパッパッと次から次へと聴き進めて、気に入った曲を抜きだして、Playlistを作るというもの。今年の冬のある日、『ボヘミアン・ラプソディー』人気にそそのかされる様に「よし、今日はクイーンでやってみっか!」という感じでPlaylist作りを始めた。そして、遂に出逢ってしまった。何回聴いても何か気になるその曲はクイーンらしくない曲であった。小気味よいギターカッティングとミニマルでスタイリッシュなリズム隊の演奏。フレディのファルセットの歌声、この上なく気持ちの良いグルーヴに満ちた素敵な曲であった。そして歌詞もまた気に入った。
君にかかると、太陽の光もかすんで見える 君が主役、そんなふうに振舞っている、わかっているよ だって、君はイカした子猫ちゃんだから 新しい帽子をかぶり、つま先で軽やかに歩き ただあてもなく スウィングの王様のようにすいすいとドライヴ 僕の胸の鼓動を感じておくれ 僕の胸の鼓動を感じておくれよ
君はイカした子猫ちゃん たわいないお喋りでも、君が来ると活気づく 君は申し分ない人だよ そこにいるだけで、君は注目の的さ 僕の胸の鼓動を、かき乱す 僕の胸の鼓動は、かき乱されるよ
君は昔は、ありふれた子供だったね いろいろな世間の俗事と折り合いをつけながら 君はいつも願っていた、望んでいた、待ち続けていた いつかトップクラスになることを でもそれが本当になった時、そう、それは本当になったけれど 君はあまりに猛スピードで、ここまで来てしまった だから、スピードを落としなよ、もっとゆっくり行くんだ もっとゆっくりと行った方がいい のんびり行きなよ
君はどうやって流行を作り出せるか、本当に良く知っているね それに君はまさに、最高にご機嫌でいるだろう イカした子猫ちゃん 新しい帽子をかぶり、つま先で軽やかに歩き ただあてもなく スウィングの王様のようにすいすいとドライヴ 僕の胸の鼓動を感じておくれ 僕の胸の鼓動を感じておくれ、ああ 僕の胸の鼓動を感じておくれよ
サーブ練習漬けの冬から30年の時を経て、「自分の中でQueenならこの1曲!」は、もう正に字の如く、『Nevermore』で更新されないと思っていたが、『Cool Cat』のおかげで更新されたのだった。
※cool cat……(米俗))ジャズ通;すてきな人
そして、マニアックな曲を選んでしまう辺りが、30年経っても何にも変わんねーな…と思ったりもしたのであった。
I thought My favorite isn’t updated nevermore,But that was done by cool cat!!
〜おわり〜