「ロックミュージックの響いた場所」
先日、デヴィッド・ボウイが死んだ。
ロック界にいつも居てくれて、
いつでも憧れを受け止めてくれるような
人が突然、この世から居なくなった。
ウソみたいなニュースはホントだった。
そのニュースを知った瞬間から、
僕のその日の行動予定が余儀なく変更された。
先週の月曜日のことである。
毎週日曜は僕の唯一の休みの日。
大体いつも、午後にディスクユニオンで
CDを買う。先週の日曜もユニオンでCDをしこたま
買い込んだ。中古の安値なものを大量に買う。
この日も30枚くらい買い込んだ。
池袋ユニオンは日曜は8時閉店。
閉店まで、物色し、レジで会計してもらい、
毎回「買いすぎた。。」とちょっとした不思議な
罪悪感に苛まれる。
けれど、悪いことなどひとつもしていない。何に対しての罪悪感なのか、よくわからないが
罪の意識を毎回感じるのだ。
そして、その後にP’パルコのタワーレコードに行く。
ここでは、ちゃんと試聴してから買うから、ハズレは引かない。ちなみに、ユニオンで買うものは、ジャケ買いや未聴の盤がほとんどなので、ハズレも引く。
でも、それが楽しい。
その日もタワーレコードで試聴して気に入ったものを4枚買った。
試聴したものの中に、デヴィッド・ボウイの新譜もあった。ものすごくサウンド、特にリズムが良かったので欲しかったが、その日は買わなかった。後日、また欲しくなったら買いに来よう、デヴィッド・ボウイはいつでも買えるし…と思っていた。
そして、その「後日」は翌日だった。
デヴィッド・ボウイの訃報を知った僕は
すぐにタワーレコードに走った。
新譜「ブラックスター」を手に取り、レジに並んだ。
後ろの人も前の人も「ブラックスター」を握りしめていた。きっと、前後の方もいつもより早めの速度でタワーレコード目指したんだろうなあ..とか思った。
毎週、週始めの月曜日は前日に買い込んだCDを
店の開店準備中に聞いて、営業中にかけたら良さそうなものを吟味する。
しかし、ボウイの居なくなったこないだの月曜は
その作業など、する必要はなかった。
ボウイ以外流す必要がないからだった。
その日はビールメニューを書くより先に
「R.I.P BOWIE」の簡易的なサインを段ボールに書いて、トイレにいつも貼ってあった雑誌の切り抜き写真と一緒に店のドアに張り付けた。
開店して間もなく
ボウイファン、ロック好きのお客様が来店してくれた。
皆、やはり、ちょっと口数少なく静かなテンションで
ビールを口に運んでいたのは言うまでもなかった。
なんとも言えぬ喪失感を隠せないのは、自分だけではなかった。
ボウイの艶やかな声に耳を傾けながら、
僕含め、何人かのお客様は無言でただただ
時間の経つのを忘れるように、そこに居た。
でもその月曜の夜、そこは
紛れもなくロックミュージックが響いた場所だった。
それはきっと
スターマンが
池袋の片隅にも
遠い天から
瞬間的に舞い降りてくれたからなのだと…
そう思ってみたのだった。